尊厳を損なわないために注意すべき点

高齢者を対象にした介護において、相手の尊厳を損なわないことが最も大切なポイントである。尊厳は人によって細かい部分に違いはあるものの、ひとりの人間として敬い、決して軽く扱わない点は共通している。
高齢者は若い時に培われた価値観や考え方に固執する傾向があるが、現代社会での価値観や常識にそぐわないからといって頭ごなしに否定してはいけない。高齢者の今までの人生を否定するのに等しい行為なので、仮に高齢者の側に非があったとして力任せに反発するのではなく、優しく諭すように注意することが大切である。特に要介護の状態にある高齢者は体の自由が利かず、思った通りのことができないことに大きなストレスを抱いていることが多いので、精神状態が不安定になっていることを考慮しなければいけない。

高齢者への介護で注意すべき点は着替えや排せつ、入浴などの行為に対する介助作業である。本来なら自分でやるべきことを第三者にさせることを恥と考える高齢者は決して珍しくない。介護サービスの利用は怠けでも悪いことでもないと諭すことは間違ってはいないが、その言い方には十分に注意する必要がある。
介護の現場では高齢者に対して赤ちゃん言葉で接するケースがあるが、これは相手の尊厳を踏みにじることに等しいので絶対に行ってはいけない。馬鹿にされていると思い苛立ちや悲しみを感じて、信頼関係が築けない、もしくはせっかく築いた信頼関係が崩れてしまうことがあるからだ。長生きしてきた人生の先輩を相手にしていることを認識し、敬意を持って接するのが介護を行う側に求められる姿勢だ。